イラン鉄道 夜行列車 2020 part1

 

ツイッター見てると普通に2年前の旅行をブログに上げてる人が居て、別に時差があっても良いということに今更気付いた。

イラン乗り鉄、夜行列車と近郊列車の乗車記。

 

 

イラン国鉄路線網

 

イランは1.648 million km²,日本の面積0.38milの4倍以上ある。路線網は主要都市を結んでいるので割と鉄道は発達している。

路線図は以下を参考に制作。

NETWORK OF IRANIAN RAILWAYS

 

面積がでかいので、長距離列車はおおむね夜行列車だ。上の実線で示した路線には全て夜行列車が走っている。点線は近郊列車(一部だけ抜粋)。

特にテヘランマシュハドは毎日6往復、2日に1回運転も5往復以上、QOM- MASHADやQAZVIN-MASHADを含めるともっと多い。それ以外でも結構田舎まで夜行はきっちり走っている。

ダイヤは変わると思うので、実際乗るときは以下のサイトをどうぞ。

TIMETABLES BY ROUTES

 

2020年1月の旅行中、2,3,5,6の夜行と、1,4の近郊列車に乗車した。

今回は1,2,3で、4,5,6は次回。

街も含めて紹介する。

 

区間/キロ/所要時間/金額

  1. Jolfa – Tabliz 約150km 3時間 25円(余りにも安いので記録違いかもしれない)
  2. Tabliz – Tehran 736km 11時間55分 900円
  3. Tehran – Khorramshahr 937km 17時間30分 1000円

 

 

1.Jolfa-Tabriz

週4便運転

 

ジョルファはナヒチェヴァン国境の街だ。アルメニア方面へもタクシーで1000円強で行けるので、アゼルバイジャンからもアルメニアからもアクセスが良く、一般的旅行者にとってメジャーなイランの玄関口といえる。

 

僕はここまではVL8で来た。

Nakhchivan railway ナヒチェヴァン鉄道 2019-2020

 

アゼルバイジャンからイランに入った瞬間に両替おやじが話しかけてくるが、国境検問所の目の前にある商店街に店を構える両替屋の方がレートは良い。とはいえ言うほど損はしないのでおやじで両替しても良かったけど。

 

ジョルファ駅

ジョルファ-タブリーズは、イラン国鉄唯一の電化区間なので人気がある。産油国なので燃料に事欠かないのにここだけ電化してあるのは謎だ。

 

釜をどこかで見たと気付くだろうが、この車両はSJ RCシリーズというスウェーデン国鉄と同形式だ。SJ RCは1967年-1988年にASEAで製造された。

 

おもいでのマルメ

 

RCにはRC1, RC2… と色々バージョンがある。

 

JolfaのRC

ジョルファの写真はRC4と側面に書いてあったのでRC4だが、なぜかSIMMERING GRAZ  PAUKER AG 1982とあった。グラーツの工場のOEMなのだろうか。

まとめるとスウェーデンが物価が高くて渡航をためらっている人は代わりにイランに行くことが出来るのでいかがでしたでしょうか。(完)

 

2020/1/2に乗車したので、イランも冬。暖房装置みたいなのからもくもく湯気が出てハリーポッターみたいになっている。何も調べず蒙昧無知のままやってきた僕だが、これは週4日の運行で、たまたま日曜日が運転日だったから運が良かった。

列車は17時半頃Jolfaを出発し、20:30にタブリーズ着。

料金25円(安すぎ(当記事であと5回くらい言う))

 

週4便しかないが利用者は多い。客車は曲線を描く屋根で欧州によくあるタイプと似ている。最安の席でも背もたれがゲーミングチェア並みに高い。

 

列車に乗ると女性が英語が通じて雑談をした。アゼルでは(ナヒチェヴァンでヒッチしたら偶然外国にも行く格闘のスポーツ選手だったので通じた兄ちゃんは居たが)英語は滅多に通じないのでなんか久々な気がする。

 

僕は列車に乗るためにイランに来たことと、この列車は最高だぜ!ブログにイランの鉄道を紹介するぜ!という旨を伝えたら、彼女は「この列車の事は書かないでね」と言ってきた。ボロい客車だからそう言ったんだろうけど、ごめん今書いた。

 

さっきの写真の通り、僕からしたら全然綺麗な客車だけどね。てか普通に綺麗だよね。

 

入国初日から英語が通じてイランはなんて文明度が高い!と思ったら、単に偶然その人がうまめだっただけでイラン旅行全体ではそんな通じる人は少なかった。ハロー!とミスター!だけ知ってる人は多い。切符は買えるくらいは通じる。

 

 

2`.タブリーズで切符を出せない。

 

僕は自分でも呆れるくらい前もって切符を出さない。どうせ空席あるだろうの精神はイランではお勧めしない。長距離鉄道のキャパよりも需要の方が多く、満席になる。

タブリーズ夕方、出発2時間前に窓口で聞くと今日は満席だという。どうぜキャンセルが出るだろうと思い(僕は旅行中はあり得ないレベルで楽観的だ)ホテルに行って荷物を持ち駅に行くともう一度聞いた。出発20分前だ。

窓口女性「ないです」

ワイ「えー今日行かないとなんだけど」(別に予定はテキトーなのでそこまで行く必要はない)

窓口女性「でもないです」

ワイ「本当に無いのか」

 

なんであの時はそこまで押しが強かったんだろう。

 

窓口女性は切符は出さずに僕をホームまで連れて行くと、他の客はほぼ乗り終わって閑散としたホームに立っている車掌に何か言った。そしてダブルブッキング用の予備のコンパに僕の場所を用意してくれた。(完全に迷惑アジア人なので良い子は真似しないようにしましょう)

 

 

タブリーズ市

 

ところで話は同じ日午前中に戻る。

タブリーズでの抗議集会 2020.1.3

2020年1月3日は、バグダット空港でイラン革命防衛隊の指揮官Qasem Soleimaniを含む10人をアメリカ軍が殺害する事件が発生し、イラン全土で抗議活動と追悼が行われた。タブリーズも例外ではない。中心の通りを悲しむ市民で埋め尽くした。

写真右から4番目の市民は特に激しく慟哭していた。

 

圧縮効果ではなく本当に一杯人が居た。タブリーズ中から全員が集まったかと思うくらいだ。プレスに交じって台に上って撮影した。

ソレイマーニーはイスラム革命防衛隊の指揮官で、イランイラク戦争でも従軍した人物だ。一応、アメリカの主張では12/27にバグダットで民間人が殺されたのでその報復らしい。あくまでСШАの主張。

 

もしかしたらタブリーズ駅窓口女性は、政情不安定でビビった外国人旅行客が早く帰国したがっていると思って親切にも無予約乗車を交渉してくれたのかもしれない。ただし僕は旅行を中止する発想は全然なかったし、僕の押しが強かった理由は情緒不安定のハイの時だっただけだ。(ひどすぎ)

 

Tips:タブリーズの窓口さんは優しい。

 

 

2.Tabliz – Tehran

 

というわけで強引に乗った433列車。 16:50発 テヘラン04:45着だ。

Middle East 銀河エクスプレス。(適当)(青いし)

牽引機はイランでおなじみの Iran Runner.  2010年に導入され150両製造したとのこと。

イランで走ってるのはこのIran Runnerかアメロコのだいたい二択だ。(アメロコには種類はある)

 

ロシアのようにベッドがそのままではなく、下段は椅子のフォーメーションとベッドとに変形する。ペットボトルの水があるので渇きで死ぬことは無い。

客室にはEUと同じC形のコンセントで充電できる。

プラツカルテになれている僕は、イランの客車はドアを閉めると少し狭い感じがした。

 

本来使うはずないコンパなので同乗者はいないと思ったら、途中駅でいつの間にかイラン人が乗ってきたように覚えている。コネなのかイランでは一般的な交渉なのか。料金はその場で現金渡しだ。900円。(距離は700km以上ある。安すぎ)

 

イラン国鉄の手書き補充券を貰った。一文字も読めない。

 

食堂車もあるがこの時はテヘランまで寝ていた。

 

朝4時45分テヘランに到着。イラン国鉄は遅延は少ない。

黄色に赤帯、入れ替え用の機関車は日立製の HD10Cというやつだった。インスパイア―ネクスト。

イラン夜行一発目に邪道な乗り方をしてしまった けど着いたのでヨシ。

 

※追記: 実は釜の後ろにいる荷物車も日本製だそうです。

 

3.Tehran – Khorramshahr (Bon Rail)

 

ホッラムシャフル(Khorramshahr)はイラン南西部にあり、シャットゥルアラブ川の近くで、川を挟んでイラクがある。川の名前は有名ではないが、ユーフラテスとチグリスが合流したあとの川というと分かり易い。

 

別にKhorramshahrに行きたかったわけではないがアフバーズと、その北にある遺跡チョガザンビルに行きたかった。路線図を見るとアフバーズからKhorramshahrとMasharに分岐しており、せっかくなら終点まで乗ろうと思った。一般観光客にありがちなことだ。

つまりKhorramshahrには用事は無い。

 

 

テヘラン中央駅。

国家最高指導者のクソデカ肖像が貼ってある中央駅は最高だぜ!

右は現最高指導者アリー・ハーメネイー 1989年に就任したイラン革命後2代目の人物だ。眼鏡をかけていて優しそうだ。左は初代最高指導者かな?

 

そんなクソデカ肖像に見送られながら、13:50発のKhorramsha行に乗る。翌朝7:30についたので、乗車時間は約17時間30分。

牽引機は(ペルシャ数字だから読みにくいけど) 60-957. 電気式ディーゼル機関車の EMD GT26CW-2. アメリカのElectro Motive Diesel社製。

 

 

列車はイラン国鉄サイト上ではFadak businessというクラスで、ちょっと良い客車だ。BON RAILというブランドらしい。ニコニコ車掌のジャケットに BON RAIL と書いてある。ボンボヤージュ的なRAILなんだろうか。それともペルシア語で別の意味があるのかわからない。

ボンレールは、専用のサイトがあってブランドになっている。

https://www.bonrailco.ir

ちょっといい列車のはずだが、最安の寝台を予約したら1000円。距離は937km。予約はネットだと外国籍の場合心もとないのでテヘラン駅で行った。

 

前に乗ったタブリーズからテヘランよりも椅子が豪華で小奇麗な気がする。発車後ウェルカムお菓子が配られた。

同コンパには英語が異様にうまい老人がおり、何か世間話をした。

 

豪華寝台列車(1000円で乗れるけど)の高揚感のお陰で、非常にボンボヤージュな気持ちになったので食堂車に行くことにした。

客は少なく僕以外に1人(1組?)だったと記憶している。前の制服3人は車掌がくつろいでいる。

 

カレーみたいな食べ物、米、イランのうっすいパン、ヨーグルト、イミテーションコーラ。

用事の無い町に向かって走る列車で味わうカレーは格別だ。265円。ハッピーセットでこれは安い。今思うとどうやって注文したんだっけ。メニューの種類は少なかったと記憶している。

さっきいた多分車掌のおやじ達と写真を撮り合った。

食べて寝ればすぐホッラムシャフルに到着だ。

 

Khorramsharの駅

 

特に用事の無い町、Khorramsharに到着。

イランの鉄道駅は中心地から離れて接地していることが多い。僕がケチなので歩いていこうと駅前をズカズカ速足で歩いていたら、タクシーが勝手に横に止まった。なんと昨晩コンパで一緒だった英語が出来る老人が客だった。

タクシーの運転手とその老人に、これから(地図4に乗るために)Mahsharに行くからバスが必要だと伝えたら、この街にはMahsharまでいく交通機関は無く、12km南東にあるAbadanからなら行けるという。そして老人は行き先が同方向らしい。親切な老人に助けられてAbadanへ向かう。タクシー代約100円。

なんでAbadanに直接行かなかったんだと老人に突っ込まれた気がする。

 

ところで駅に到着した瞬間、空気が悪いと感じたが、彼曰く工場があるという(何の工場かは忘れたが、ここは石油が出るので石油関連だろう)

 

 

Abadan

 

用事の無い町Khorramshaの隣のAbadan。イラクに近いこの街なら川の向こうに隣国が見える。中心奥の建物はイラクに位置する。あそこまで泳いでいけば訪問国数が増えるが訪問国数が増える前に射殺されるだろう。近くまで来たけど中々入国は難しいイラク。

 

風情のある(ぼろい)木造船が係留してある国境河川沿いだが、すぐ横の公園は小奇麗だ。

イランイラク国境なんて殺伐としてそうだし僻地だと思ってたら案外文明度が高い。Abadanの街中は建物は土気色だが、街の雰囲気は明るい。1月だが日差しはありぽかぽか陽気だ。アバダンは7,8月の“平均”最高気温が45℃とのことで、ぜひとも夏に行くことをお勧めする。

人口は多すぎず、人通りが多すぎないから治安は良さそうだ。住んでも良いくらいだ。

 

 

Abadan 1st oil Gas Station (イラン初のガソスタ)

 

存在すら知らなかった町Abadanに面白い展示物を見つけた。

 

アバダンにはイランで初めてのガソリンスタンドがあった。それが今は博物館になっている。

小さな博物館で、展示物であることを忘れたとでもいうように(門だけは開いてた)人影が無く、ズカズカ入っていくと奥から人が出てきた。「何でお前来たんだ?」みたいな感じだったが、見せてといったらちゃんと見せてくれた。

1927年にBPによって作られたそう。アバダンは石油が豊富な土地だ。

博物館には旧式の給油機、オイルランプ、オイルストーブ、とても古いOPEL、タンカーだったがタンクを外された旧式のDODGEなどが展示されていた。

 

 

First Gas Station in Iran  BP (British Petrol)が作ったらしい。

 

 

4のMahsharへ向かう

 

乗り潰しのために折り返すのは非効率なので、Mahshar発の近郊列車に乗るつもりだ。マシャール駅に向かうべくバスターミナルに行った。バスは無いそうで、乗り合いタクシーならある。僕以外に子連れの家族3人が集まって走った。

Abadan – Mahshahr 乗り合いタクシー 140円 (距離は100km。(トマンの計算方法が間違ってるのかもしんないけどどうでもいいような金額だった)ちなみにAbadanの市内バスは一乗車5円だった、何が何だかわからない。)

 

 

道路は96号線といい一直線の道だ。だだっ広い片側2車線は、1車線ごとが広くて滑走路みたいな見た目だった。乾燥したイメージのイラン南部だが、道路左右には湖と湿地帯がある。案外水が豊富なのは巨大河川のおかげだろう。Shadegan Nature Reserveという自然公園らしい。

 

 

Mahshar 駅( Bandar Mahshar)に到着。ばいばい。

 

イラン、通貨危機のせいなのはわかるんだけど、安すぎる

いや、トマンの計算方法がしくってる可能性すらある。日記にそう書いてあるんだが余りにも安すぎて僕は自分を自分で信じられない。

(訪問 2020.01)

 

4~6は次回。

 

 

 

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